遅ればせながらスティーブン・スピルバーグ監督の映画「ペンタゴン・ペーパーズ 情報機密文書」を観に行った。
ベトナム戦争で勝ち目がないとわかっていて(でも実際は攻め込んで、双方に大勢の死者をだした)その調査結果が書かれた機密文書ペンタゴン・ペーパーズが、内部の人の告発と新聞報道で明らかにされる事件。これを報じたワシントン・ポストの女性社長と編集長が中心のお話。
映画評論家町町山智浩さんのアメリカ流れ者(TBSラジオのコーナー)で知って、この映画をスピルバーグが他の製作中の映画を一時中断して9ヶ月という早撮りで作り上げたとか、それもトランプ政権に対する解毒剤だと言っているなんてなんというクリエイティビティの使いぷりと気になってまして。
実際はそう過激なことを言っても新聞、マスコミの役割をこうあるべきだ!と煽るわけでもなく物語は自問自答のようにじわじわと苦心しながら答えに行きつく様子が描かれるのが良かった。
そして同時にそれだけでない面も見えてきた。
ワシントンポストの女社長キャサリンは元々は父親の新聞社を伴侶が引き継ぐのだけど 彼女が45歳の時に夫は自殺。
働いたことなかったのに、新聞社の社長になる。
しかし1970年、仕事をしても男性社会で女性は低く見られて、女性の友人も女性が男性と対等に政治について話せるとも思っていない。
それでも会社は資金が苦しいの会社の株式公開に動かないと。
(どこまでも結構なプレッシャー)
子供のため、会社を遺してくれた父や夫のため、社員のため。
しかし機密文書を入手することになり、新聞に掲載すれば刑務所行きか、遺された会社も失うかもしれない。株主は手を引こうとするだろうし、親しくしてきた政府関係の友人も裏切ることになる。子供のためにもなるのか?
掲載を止める色んな声が聞こえてくる。
しかし彼女を奮い立たせるのは新聞への愛と
新聞、報道のあるべき姿勢
そしてこれ私の仕事だってこと。
あーなんて孤独で追い詰められた決断。
この時代から約40年。色んな立場で色んな女性一人一人が日々どこかでこんな決断を繰り返してきて、生き方、働き方を広げてきた。会ったこともない女性たちと彼女たちを励ました人たちの積み重ねから生まれた 今という時代の恩恵を受けて生きている。そしてこの映画は そんな今まで切り開いてきた女性への称賛とこれからさらに開拓し、今生きる女性への応援でもあるのではないかと思う。
検索して分かったのだけどこの映画の脚本にスピルバーグが出会うのが2016年秋、2017年5月から他の撮影をストップして撮影開始、11月完成、12月上映。早い!
ハリウッドのセクハラに始まるme too運動が2017年10月、今年2018年3月のアカデミー賞で主演女優賞のフランシス・マクドーマンドがスピーチでInclusion Rider(ざっくりですが私を雇うならこの映画にかかわる男女の雇用を均等にしてねって契約)を訴えた。分かりやすいニュースだけど、ある流れを感じる。
よからぬ事件もそうしようとする人もいる現実。でも制度ができるより先に、より面白い作品ができる方法で平等さの実現していこうとする流れも確実にある。
でも個人の日常で選択が確実にどこかの誰かと昔よりずっと早いスピードで繋がっていっている気がして仕方ない。